庁舎問題特集号「市庁舎問題を検証する」・・・こがねっとレポートno.114から
市民参加の「基本計画」を無視
第二庁舎を18億6000万円で購入!?
稲葉市長が9月議会中に突然、「新庁舎建設を凍結し、賃借している第二庁舎を買い取る」「取得の補正予算約18億6600万円を9月24日までに議決してほしい」と提案してきました。
市役所新庁舎は、蛇の目ミシン工場跡地に建設して2018年5月にオープンするという計画になっています。補正予算審議の前に、方針の急変について全員協議会で、7日間にわたり質疑が続きました。
協議会は、質疑の答弁につまり度々中断。しかも、質問すればするほど不明な点が多いことが鮮明になるばかり。6日目の9月29日、篠原議長が「議案の撤回を進言する」と発言。翌30日に市長は「進言を重く受け止め」、「改めて内容を精査する必要が生じた」と、方針の変更と補正予算の提案を撤回しました。しかし、市長は報道陣に対し「第二庁舎取得の考えは変えていない」と語っています。
市長提案は何が問題だったのか、庁舎建設の検討に関わった市民の方々はどう受け止めたのか、詳しくお知らせします。
「買い取りはお得」は本当か
市長の提案内容の概要は
①建築資材、労務単価等が高騰。基本計画に示した財源の確保が困難。
②第二庁舎取得の借金返済の方が、賃料よりも安く済む。その差額(15年間で計約18億円)を計画的に庁舎建設基金に積み立てたい。
③蛇の目工場跡地に新庁舎建設の考えは変えていない。
財源確保はできないのか
庁舎建設基本計画では、建設費用(移転等含む)を55億円と試算していました。今回、資材や労務単価高騰の影響で70億円と試算し直しています。一方、市は、中期的な財政見通しは示せないと答弁しています。なぜ基本計画に示した財源確保ができないのか、質疑でも根拠は明らかになりませんでした。
「財政効果」はあるのか
第二庁舎を購入した場合の借金の返済期間を15年とし、この間、「年額約2億2000万円で借り続けた場合」と「借金返済年額約1億円」とを比較。「18億円の実質財政効果がある」と、市は説明しています。だから「お得」というのですが、次の点は考慮されていません。
①賃料は引き下げられてきたが、反映されていない。
②地主の所有物でなくなるため、固定資産税・都市計画税(15年で約3億円)が入ってこなくなる。
③第二庁舎の取得は、築49年の本庁舎の長期間の使用継続も意味する。それには、耐震診断・補強工事が必要。2~12億円の補強工事か仮設庁舎建設が必要になる可能性がある。
④第二庁舎も約10年後に大規模修繕の時期を迎えるが、どれだけの経費が必要かは検討されていない。
第二庁舎の購入ありき?
議会に「新庁舎建設の凍結を視野にあらゆる方策を検討」と報告したのは、6月でした。しかし、4月10日には東京都に第二庁舎取得のための起債の相談に行っていたことが今回の質疑で判明。同16日には土地所有者に売却の意向を訊ねています。今年度予算に新庁舎建設の関連予算を計上しながら、「新庁舎凍結・第二庁舎買い取り」の可能性を探っていたことが明らかになりました。
6月議会に「あらゆる方策を検討」と報告して以降、土地建物の測量や不動産鑑定が行われていました。副市長と各部長による庁内検討委員会でさえ正式な検討をしないまま、密かに市長と特定の部長とで取得の手続きは進んでいたのです。
7日間の質疑から
「第二庁舎の取得が本当に市民のためになるのか」と考えた議員は、真剣に質疑に臨みました。しかし、それを確信できる答弁は出ませんでした。
3・11という経験を経て市民の願いは、災害時の司令塔となる総合庁舎を「ジャノメ跡地に早く建設してほしい」です。「新庁舎凍結・第二庁舎買い取り」という、市民意思を無視した提案は完全になくなったわけではありません。
公共施設全体の再整備も視野に入れ、同時に長中期の財政計画をしっかりつくるなかで、市庁舎問題を考え、結論を出さなければならない、と考えます。(林)