■医療格差を拡大
厚生労働省が後期高齢者医療制度を導入するねらいは、75歳以上を国民健康保険制度から切り離し、国の財政を圧迫する医療費を抑制することにあります。生活費を年金に頼る高齢者のなかには、強制的に年金から原則天引きされるため、治療費が払えず、早期の治療を見過ごして、寝たきりや重度の認知症に進むケースが増えると思われます。
■高齢者の声が届くしくみを
制度の運営は、各都道府県単位で設立する「後期高齢者医療広域連合」という特別公共団体が行います。今後保険料は2年ごとに改定され、高齢者の増加に連動して、引き上げが予想されます。低所得者対策など、「広域連合」では市民の声が十分反映されず、被保険者や専門家を交えた議論の場を新たに設けることが必要です。
●低所得層対策は国が責任をもつべき
新しい制度に変わり、低所得者層の保険料は現行の国民健康保険料より上昇します。1月29日、東京都広域連合は低所得者対策として、年収208万円以下の低所得者9万人の保険料を軽減する方針を明らかにしました。この軽減措置で厚生年金平均受給額201万円の場合、年間保険料は5万3千8百円になります。(赤の文字は朝日新聞紙面より抜粋)
しかし今回の減額にかかる費用は全て各市区町村が負担することになります。保険制度崩壊の責任は、まず国が取るべきではないでしょうか。
■都の税金の配分を見直せ
一方、08年度、都の税収見込みは5兆5100億円に達し、バブル期を上回る過去最高を記録しましたが、都は大規模施設改修に2500億円の基金、東京五輪の準備として1000億円の基金を積み立てる計画です。今、最優先すべきは病気や障害をもっていても安心して生活できるセーフティネットのしくみです。都民の医療格差を是正するためにこそ、この税金を使うべきです。