歴史教科書の中身を知ろう

子どもたちは歴史から何を学ぶべきか

来年は4年に一度の教科書採択の年にあたります。次世代の子どもたちが、平和な世界を築いていくためには、歴史から何を学び、何を考えるべきなのか。小金井・生活者ネットワークは、中学校の歴史教科書を読み比べる会を開き、「戦争」に関する歴史観の違いを検証しました。

●教科書でこんなに違う歴史観!
 今回、読み比べたのは「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)が執筆した扶桑社版と、帝国書院版、東京書籍版(現在市の中学校で使用)の3冊。「つくる会」は、既存の歴史教科書が「自虐史観」に毒されていると批判し、「日本歴史に誇りのもてる教科書」をつくる運動を進めています。すでに杉並区や都立中高一貫校で使用されていますがが、偏った歴史観に各地で採択反対の声が上がっています。
 特に、「つくる会」教科書の第二次世界大戦時代の項目には、他2社にはない独特な歴史観が見られます。「日本人の戦争への罪悪感」は、東京裁判や、「日本の戦争が不当であった」というアメリカの宣伝によって培われたという見解が該当します。また、「日本将兵は敢闘精神を発揮してよく戦った」「国民が戦争の勝利を願って、」「よく働き、よく戦った。」の記述にも偏った歴史観を感じます。弾圧統制下でやむを得ず戦い、終戦を待ち望んでいた人々の存在に、一言も触れていないからです。

●「アジアへの進出」から学ぶ事は?
 太平洋戦争下の「アジア進出」が、現地住民への天皇崇拝の強制、厳しい強制労働などの人権侵害や虐殺による植民地支配であったことは周知の事実です。帝国書院には、インドネシアの教科書が紹介され、「人々の力と富を根こそぎ奪った」日本軍占領時代の様子が記されています。しかし「つくる会」教科書は、インドネシアの人々が「日本を解放軍として歓喜を挙げて迎えた」として、アジア進出が「アジア諸国の独立の動きを早めるきっかけになった」と結んでいます。

●現場の教師に教科書採択権を!
 不思議なのは、これほどまでに異なった歴史観に立つ教科書が、同じ検定基準を通過したことです。中学の歴史教科書は現在検定中で、どれを採択するかは、市の教育委員会が決定します。採択には現場の教師の意見は反映されません。懸念されるのは、歴史観に偏りが大きいと、教師の自由裁量が狭められることです。
すでに小金井市では、「平和教育」の一環である「広島原爆ドーム」の修学旅行が、語り部の高齢化や予算の都合で中止となっています。「つくる会」教科書は、原爆ドームを小さな写真で「世界遺産」として扱っているだけ。悲惨な戦争をしっかりと伝えている教科書の採択を見届けるために、教育委員会の傍聴に行くつもりです。(杉本早苗)